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フレデリック

「自分らしく生きる力」の支援をどの子にも。元教師が学校の外で気づいた、選択肢の大切さ

のぞみ
2024-08-08

みなさんには、“居場所”がありますか?居場所があると、なんだか安心して生きられるような、そんな気がします。
それでは例えば、学校に居場所のない“不登校児の居場所”って、どうなっているのでしょうか。

今回は、solで不登校児と場づくりをしているスタッフのよっしー(吉村たくみ)に、その事業への思いをインタビュー。
すると、あらためて居場所の大切さが見えてきました。


学校から飛び出して、できたての場づくりへ

私たちsolは
「生きる力を引き出し育む場づくり」
「笑顔を失う予防と回復の場づくり」
のさまざまな事業に取り組む中で、学校や家庭や地域に居場所を見いだせない子どもが「ここに居ていいんだ」と、ほっとひと息つける居場所づくりを目指して、フレデリック(Frederick)を運営しています。

フレデリックはまずフリースペースとして2022年に誕生しました。きっかけはとある高校生。福祉制度の狭間でケアの手が届かない、だけどできるだけ迅速に必要な支援をするには?と手探りで。そして2023年4月からは高森町から委託を受け(熊本県内で初の公設民営方式です)、フリースペース内の一機能として教育支援センターの運営もスタート。町内外の親子の第3の居場所として、それぞれをケアできるよう、広く間口を開いています。

よっしーがsolに参加したのも2023年4月でした。以前は熊本県内の中学校に11年間勤務し、そのうち3年間は特別支援学級も担任。調べてみると中学校教員の勤続年数は全国平均で17年だそうで、頼れるベテラン先生だったのかなーと想像してしまいます。そんなバリバリ先生が、公教育の現場を越境してsolのフレデリックに飛び込んだのは「学校の外から、教育に関わってみたい」という思いに突き動かされたためだそう。

現場で見えた、不登校児のキラキラが忘れられない

教員として不登校の子どものことも「どう過ごしているんだろう?」と気にはなっていたといいます。ところが少数の不登校児よりも、どうしても多数派の子どもの方を中心に進まなくては...「マイノリティ側にいる子に、何かできないか」とモンモンとしていました。

教員は余裕がない。とはいえ、学校の外の子どもたちのことを「見にいけばよかった」という、よっしーさん。「自分も見てなかったから、なおさら、現役の先生に見に来てもらいたい」。(特別支援学級でも子どもたちの療育現場を見に行ったことがなかったことも、今振り返ると悔やまれるそう)

フレデリックに出会ったのは、たまたま知人のsolスタッフにさそわれて。すると子どもたちは「はじめましてなのに、楽しそうに接してくれた」のだそう。これまで目を向けてこれなかったけれど、いざ不登校の子と一緒に活動してみたら「なんだ、ふつうの小中学生じゃん!」と気づいたのだと言います。不登校だからダメになっている訳ではない。むしろ伸び伸びとした姿が印象的でした。

「こんなふうに地域でキラキラと生きられたら、それも素敵だよね。」そう思ったよっしーさん。そしてふと、「毎日、こんな場所で働けたらいいな」 とも感じたのだそう。それから半年後、思いがけずそれが現実となりました。


にげるという選択肢から、自分らしく生きる力を伸ばしていく

よっしーさんが今、フレデリックで一番大切にしているのは「自分で決めることを、サポートしてあげること」。子どもから意見を求められればアドバイスはするけれど、最後は自分で決めるのが大事だと考えているのだそう。

そのためにも欠かせないのが、多様な選択肢です。「選択肢がたくさんあると、子どもたちも、ちょっと強くあれると思うんです」というよっしーさん。自分自身の力で学校復帰の道を模索している子どもたちを見守る中で、そう感じるのだといいます。

時には、にげる・やめるという選択肢も人生において大切なこと。誰かに強制されたり、誰かに合わせたりせず、自分のペースで、エネルギーが貯まるまではゆっくり過ごすことも必要だと考えているそうです。

「“にげるコマンド”って知ってますか?ゲームのドラクエとかポケモンで出てくる、戦闘から逃げる決断です。」そんな“にげるコマンド”を、大人はみんな使わない。別の場所で挑戦する、別の機会を狙うとかの選択肢だっていいと思う、とよっしーさんは笑顔で話してくれました。

「にげることは、ネガティブじゃないんですよ。」

最後に、フレデリックの2年目に向けて、メッセージを書いてもらいました。

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今はフレデリックだけでなく、他事業の活動に参加している子どもや保護者、あるいは地域の方と関わることも多く「インクルーシブな日々」を味わっています。
その視点で振り返ってみると、solに来て以来「自分が開いていくこと」を試されることが多かったと思います(そして、今も現在進行形)。

人間は、一人ひとり違うところだらけで、見た目や年齢はもちろん、生まれ育った環境も、様々な経験をとおして作られた価値観も、はたまた今抱えている悩みも、どれか1つでさえ〝自分と全く同じ〟なんてありえません。

そう頭では分かっているのに、他人と同じであることを求めたり、多様であることにビビったりする自分が、よく顔を出していました。

でも、solには「多様であることが当たり前」という前提が空気のようにあります。solに関わる全てのスタッフが互いの凸凹を持ち寄って、solを求めてくれる方々がより豊かに暮らしていく道筋を一緒に考えています。

solと共に過ごす子供達、保護者さん、地域の方々とも一緒に、「多様であることが当たり前」という感覚を、もっと共有していきたいという思いが溢れているように感じます。

そんな環境に身を置いて、自分がどう変わってきたか(あるいは何が変わっていないのか)を言語化することはまだ難しいですが、モヤモヤすることも含めて、人間として豊かな時間 を過ごせている自信はあります。

毎日、こんな場所で働けている運の良さとご縁に感謝するとともに、solを頼ってくれる人たちの力になれるよう、もっと自分を開いていく2年目にしたいと思っています。
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フレデリックでは、誰かの役に立てる喜びや自分が大切にされる感覚、自分で自分に「いいね」と言える力を育めるよう、人や社会とつながれる環境をつくっていきます。学校以外にも世界が広がっていることを知ることで「自分は大丈夫」と思えるようになり、物事を前向きに考えられるように。そうして「自分らしく生きる力」を伸ばせる居場所を目指しています。

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